近鉄タイプ剛体架線云々補足…シンプルカテナリ篇

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[場所]近畿日本鉄道橿原線 八木西口駅など

近鉄タイプの吊架剛体コンパウンドカテナリ架線とコンパウンドカテナリ架線との切替部分ネタは2020年3月5日アップにて「新青山トンネルなど」で、その補足で2020年4月14日アップにて「新玉手山トンネルなど」を取り上げているが「近鉄タイプ剛体架線⇔カテナリ架線切替部分」をシンプルカテナリにまで範囲を広げれば、間近に見れる駅はまだまだあることを新玉手山トンネルなどの記事の締めで上本町の「鉄道バー駅」のマスターの言葉としてニオワセておいたが、それをさらなる補足記事として紹介しよう。
場所は、タイトル回りで一目瞭然だが、ではまず橿原線 八木西口駅間近の切替部分から眺めていこう。

八木西口駅1番線ホームからの橿原神宮前方(南向き)の眺めで、クリーム色のガードがJR桜井線の鉄道跨線橋。電車は22600系Ace+12400系サニーカー6連使用の特急京都行。このパンタグラフのひしゃげ方からガードの低さが計れるんじゃなかろうか。実は、この低さがココに吊架剛体シンプルカテナリ架線が採用された理由になっているとのこと。それとJR桜井線ガードの先に立つ二段式門型架線柱の存在もとりあえず覚えておいていただきたい。
やはり八木西口駅1番線ホームからの同じ向きで、架線柱上部まで入れた写真。ここから電線5本がガードの先の高い二段式門型架線柱までJR桜井線の上空を越えているのが解る。
上写真の架線柱上部の2番線ホームからのアップ。上の電線は一見特別高圧送電線っぽいが、本数からすると、上左2本が信号高圧配電線、上右3本が動力高圧配電線、間の細いワイヤーは架空地線。下は饋電線で、吊架剛体架線(電車線)に直接つなげて、吊架剛体電車線は饋電線を兼ねているようで、同区間に饋電線はない。
1番線ホームからの橿原神宮前方で、吊架剛体シンプルカテナリ架線の端部には張力調整装置がない。左の太いケーブルは通信線。電車は22600系Ace+22000系ACE4連の特急京都行。
上写真の架線柱を反対(南)側から眺めたトコロ。プラットホーム間に渡り線があるため、架線の配置も複雑になっている。電車は1020系1035Fの普通京都行。
本題の切替部分の話題に戻ろう。下り線の切替部分を走る電車で、9200系9208Fの普通橿原神宮行。
2番線上りホームから切替部分を遠望。吊架剛体カテナリ架線とカテナリ架線がやや離れて張られているのが解る。電車は1259系1264Fの急行京都行。
JR桜井線のガード(鉄道跨線橋)の高さの関係でこの部分に吊架剛体シンプルカテナリ架線が採用されたのは解ったが、ではナゼ高さ不足なのかの疑問は残る。
ナゼなら、近鉄橿原線は大阪電気軌道により1923年(大正12年)3月21日の開通なのに対し、JR桜井線(万葉まほろば線)は大阪鉄道により1893年(明治26年)5月23日の開通と、JR桜井線の方が先に開通しているのに、不思議にもこちらがオーバークロスしているという点。おそらくJR桜井線は付近の飛鳥川を渡るためにこの辺りは築堤で敷設されていたトコロに、近鉄橿原線が地平のレベルで延びてきたら、JR桜井線の築堤の高さが微妙で、オーバークロスするには高く、アンダークロスするには低かったが、結局アンダークロスを選んだってことだろうか。

近鉄奈良線にも剛体架線⇔カテナリ架線切替部分を遠望ならできる駅がある

近鉄奈良線の新生駒トンネルで吊架剛体シンプルカテナリ架線が採用されているのは有名な話だが、このトンネルのシンプルカテナリ架線との切替部分がある坑門は、両側とも最寄りの「石切」「生駒」の両駅から遠望することができる。

新生駒トンネル石切(西)側坑門前の切替部分。100mmレンズでこのくらいに見える。電車は8400系8414F田原本線100周年復刻カラーなどの急行大阪難波行。ちなみにタイトル写真も同地点からで、電車は5800系5803F海遊館トレインラッピングの快速急行三宮行。
新生駒トンネル石切側坑門前にそびえ立つ元・特別高圧線の鉄塔を兼ねた二段式門型架線柱。ただ、一番上のビームにあった特別高圧線はすでに撤去されている。左の鉄塔に架かっている電線は付近の鷲尾開閉所からの引き出し(or引き込み)で、線路上空でケーブルに纏められて、トンネル内へ向かっているのが窺える。
新生駒トンネル生駒側の坑門を、生駒駅3番4番線ホーム難波寄りから西向きに眺めたトコロ。架線柱4つ先の二段式門型の上ビームには特別高圧送電線6本がしっかり架かっていて、ドコから忽然と現れたのか気になってしまう。手前2つめの架線柱のビーム上に架かっている細い電線8本は高圧配電線と低圧配電線と思われるが、ドレがドレだかは不明(汗)。太い電線4本は饋電線。なお、この位置はスペースが狭いので切替部分を眺めるには不向きな場所でもある。
ところで、前回2020年4月14日アップ「新玉手山トンネル」と同じ送電線ネタになるが、上の写真を見て、特別高圧送電線が石切側にはないのに、生駒側では架線柱上に忽然と現れているので、それなら新生駒トンネル区間では特別高圧送電線がドコを通っているか、気になった人が居るのではないだろうか。
実はこの件は、現地でじっくり眺めてこなかった(恥)。
ただ、この記事を書くにあたり調べていて解ったことがある。それは、近鉄電気エンジニアリング株式会社のFBによってだが、生駒山越送電線は2016年11月1日に撤去することになったということ。
そこからすでに3年以上経っているので、当然もう生駒山越送電線の電線と鉄塔の一部は撤去されている。

近鉄奈良線系統の他の吊架剛体シンプルカテナリ架線も紹介しておこう

2020年3月5日アップ「新青山トンネルなど」の記事の中で、文字だけの紹介で写真を掲載してなかった難波線と、さらに奈良駅の吊架剛体カテナリ架線もせっかくの機会なので、写真をお見せしておきたい。

近鉄奈良駅は頭端式ホームの終着駅なのは皆さんご存知と思うが、その2番線の車止めを同駅の吊架剛体シンプルカテナリ架線の代表として掲載させていただいた。架線終端部には張力調整装置がいらないのが見てとれる。
難波線には吊架剛体シンプルカテナリ架線が採用されているのは既報の通り。写真は大阪難波駅で、2番線に停まっているのは21000系アーバンライナーplus。ということで写真右が奈良方。
大阪難波駅のプラットホームからの吊架剛体シンプルカテナリ架線のアップ。
大阪難波駅2番線ホーム尼崎寄り端からの西向きの眺めで、ドコまでが吊架剛体シンプルカテナリ架線なのか気になって眺めたが、まだ先へ続いている。電車は21020系アーバンライナーnext。
阪神なんば線桜川駅ではすでにカテナリ架線になっていた。この写真は2番線ホーム尼崎寄り端からの西向きの眺めで、引き上げ線には一般的な剛体架線が敷設されていて、その切替部分がオモシロイので載せてみた。
上写真と同じ桜川駅ホーム尼崎寄り端からの西向きの眺めだが、こちらは1番線側。引き上げ線に近鉄電車が停まっているのが見える。締めに一言添えると、この3枚の写真はISO6400で撮っているので架線が写っているけど、実は肉眼では見えていない。カメラ技術がスゴイ時代になったモノだ。
八木西口のガードの高さ制限の理由を推定で書いたり、新生駒トンネルでは特別高圧送電線の設置部分を徹底的に探索しなかったり、はたまた各電線の用途を記さなかったりと、記事内容にツッコミがイマイチ足りないようだが、交通や電気専門の業界紙サイトではないので、そこら辺はお許し願いたいのと、本サイトのテーマ「鉄道が主役の旅スタイル」の一つとして、現地で気になる物件があったら、過去などに思いを馳せながら眺めるのも楽しいよなっていう一例を挙げさせていただいた点を理解していただけたらありがたい。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。