近鉄タイプ剛体架線云々補足…コンパウンドカテナリ篇

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[場所]近畿日本鉄道大阪線 大阪教育大前駅など

近鉄タイプ剛体架線、いわゆる吊架剛体カテナリ架線の解説と、そのカテナリ架線との切替部分の説明は2020年3月5日アップ「近鉄タイプ剛体架線⇔カテナリ架線切替部分が間近に見れる駅」で記事にさせていただいた。ところで、その中で吊架剛体コンパウンドカテナリ架線⇔コンパウンドカテナリ架線切替部分が間近に見れる駅が大阪線西青山駅だけのように書いてしまったが、実はそんな切替部分が間近に見れる駅がまだあることに、先日に大阪線の運転席後部で前方を眺めていて発見した。

前回に紹介した新青山トンネル西青山駅側坑門前の吊架剛体コンパウンドカテナリ架線⇔コンパウンドカテナリ架線切替部分で、そこを通る下り列車をプラットホームから眺めたところ。剛体が弓形にそった形をしているのが見て取れる。電車は12200系新スナックカー使用の下り特急 宇治山田 行。
その駅は大阪と奈良の府県境に近い大阪教育大前駅で、プラットホーム東南東側(伊勢中川方)間近にある新玉手山トンネル坑門前が上記にあたる。コレは筆者の見落としでもあるので、なので、前記事の反省と補足の意味もこめて、この架線切替部分を早急に紹介することにした。
ただし前回のように架線のみを見るだけでは進歩がないので、この回では、切替部分を電線路全体で観察していくことにしよう。

まずは2番線上りホームからで、東側(伊勢中川方)よりの眺め。電車は切替部分を通り、大和朝倉へ向けて発車していく1422系1427Fなど4連。
吊架剛体カテナリ架線⇔カテナリ架線切替部分のアップ。吊架剛体カテナリ架線とカテナリ架線が案外近くに並べられているのが解る。
下り線側の架線柱に取り付けられている筒状のモノは吊架剛体カテナリ架線の張力調整装置で、バネ式を採用している。
この写真からは1番線下りホームからの眺めで、上写真の張力調整装置を下から見たところ。上の吊架線のにだけ張力調整装置がついていない。
1番線下りホームからの新玉手山トンネル坑門の眺め。プラットホーム東側端は切替部分にこれほど近い。電車は21000系アーバンライナーplus使用の上り特急 大阪難波 行。
1番線下りホームから眺めた切替部分。上下線ともに吊架剛体コンパウンドカテナリ架線が内側に張らているのが解る。
吊架剛体コンパウンドカテナリ架線の吊架線は饋電吊架式を採用しており、饋電線は吊架線に接続されている。
上り線の吊架剛体カテナリ架線の張力調整装置。やはりバネ式で、上の吊架線のにだけ張力調整装置がついていない。
プラットホーム東側(伊勢中川方)にそびえ立つ特別高圧送電線の鉄塔を兼ねた二段式門型架線柱。特別高圧送電線がこの高さで山にあたるとトンネル断面がそうとうな大きさに…。そんなわけはない(笑)。では、特別高圧送電線はドコを通っているのだろうかと、疑問がしょうずる。
ところで、上の写真を見て、特別高圧送電線が新玉手山トンネル区間ではドコを通っているか気になった人が居るのではないだろうか。かく言う筆者がそんな人なので、現地でじっくり眺めてみた。その結果の考察はトンネルの中を通っているとしか考えられないということ。

二段式門型架線柱の上ビームの偉そうな電線6本が特別高圧送電線。右の枠内の電線右3本が動力高圧配電線、左2本が信号高圧配電線。
切替部分上で特別高圧送電線を「CBACBA」の碍子部分に引き下げて、何かの機器を使用しケーブル化して、トンネル天頂部に吊架されてトンネル内を抜けているように見受けられる。
かつて新青山トンネルでは特別高圧送電線は旧線跡に沿って設置されていたので、まずは、新玉手山トンネルもそのスタイルかなとも思ったが、新玉手山トンネルは1992年10月に完成と比較的新しく、坑門前の装置が大げさなので、現代の技術を駆使して可能にしたと思ったのと、旧線跡に送電線が設置されていなかったので、ケーブルにしてトンネルの中を通しているのだろうと結論させていただいた。
ちなみに、新青山トンネル付近の特別高圧送電線は、近鉄電気エンジニアリング株式会社のFBによると、2014年4月8日限りで撤去されているらしい。

新玉手山トンネルの伊勢中川側坑門。右に分岐している線は旧線跡で、ここに特別高圧送電線は設置されていない。なお、この旧線跡の先には玉手山トンネル跡がある。
余談になるが、大阪線の別の一部トンネルでは、特別高圧送電線がトンネルの真上の山を鉄塔と送電線で越えているところもある。

トンネル真上のルートで山を越える特別高圧送電線が間近に見れる駅。室生口大野駅東側(伊勢中川方)。
何ヶ所かあるので、運転席後部や車掌室前で展望ができる機会があったら探してみるのも面白いかも知れない。

近鉄大阪線で剛体架線⇔カテナリ架線切替部分を遠望できる駅ならまだある

駅から間近とまではいえないが、遠望ながらそれなりに吊架剛体コンパウンドカテナリ架線⇔コンパウンドカテナリ架線切替部分を見られる駅がまだあるので、その写真も載せておこう。

東青山駅東側(伊勢中川方)。22600系Aceがきたので、その写真を選んだら切替部分が隠れてた(汗)。最後尾の先あたりが切替部分で、広角レンズで撮っているから遠く見えるが、実はそれ程でもない。
榊原温泉口東側(伊勢中川方)。プラットホームがカーブしているため、やや眺め辛そうだ。
さて、この回では吊架剛体コンパウンドカテナリ架線⇔コンパウンドカテナリ架線切替部分が間近に見れる駅を紹介したが、近鉄タイプの剛体架線を採用している区間は吊架剛体シンプルカテナリ架線を含めればまだ他にもある。そのことは前回に難波線を紹介しているのもあって、皆さんご存知だろう。で、区間を奈良・京都線系に広げれば、この中に吊架剛体シンプルカテナリ架線⇔シンプルカテナリ架線切替部分が間近に見れる駅があることが、上本町の「鉄道バー駅」のマスターのアドバイスで判明した。それを次回「近鉄タイプ剛体架線云々補足…シンプルカテナリ篇」で紹介する予定なので、ドコが出るかお楽しみに。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。