鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所]JR東北本線 利府駅周辺
駅なかや駅近の鉄道にまつわるオブジェやモニュメントを訪ねる不定期シリーズです
JR東北本線の利府駅は、いまでこそ枝線の終着駅ように見えてしまうが、かつては線路がここから先の現・品井沼駅までつながっており、東北本線の中間駅だった。ところが、この利府-品井沼 間には16.7‰の勾配があり、これを避けるために1944年11月15日に「海線」と呼ばれる 陸前山王駅 を経由する迂回線が開通、従来の線路は「山線」と呼ばれるようになった。さらに1962年4月20日には山線の松島-品井沼 間が廃止、同年7月1日に利府-松島 間が廃止され、この時に利府駅は枝線の終着駅になった。
東北本線の岩切-利府 間に乗ったことがある方ならご存知だと思うが、この区間は北西側(岩切側から見て車窓左)にJR東日本新幹線総合車両センターが寄り添っている。このような立地から、線路の途中よりその敷地に併設する仙台レールセンターへの引き込み線が分岐していたり、途中駅として1982年4月1日に作られた新利府駅には同車両センター関係者専用口が設けられたりもしているのだ。そんなことからも、この路線が東北新幹線を運行するために、それなりの補完的位置にあることは一目瞭然だろう。さて、これだけの新幹線絡みの役目を担った路線の終着駅だが、駅前には飲食店街がある程度で、鉄道系モニュメントは見あたらない。しかし、少し離れた場所には保存車輛が多く保管や展示されていたりする。このことは一部では有名なので、知っている方はそれなりにいるのではないだろうか。
ではまず利府駅北東500mほどの場所にある 森郷児童公園 に保存展示されている機関車から眺めていくことにしよう。
※2022年2月2日追記:ED91 11 は保存を求める団体が所有者の東日本旅客鉄道株式会社と協議を重ねていたが難航し、保存地の地方自治体である利府町が2022年1月4日に解体を発表。2022年1月13日に解体工事に着工した。
https://www.town.rifu.miyagi.jp/gyosei/soshikikarasagasu/shisetsukanri/jutakukanri/5/4801.html
東北ゆかりの交流電気機関車のトップナンバー機がズラリ
利府駅から見て上記の公園の真逆方向、南西に800mほどの所に JR東日本新幹線総合車両センター の利府門があり、その先には新幹線車輛6両と在来線機関車8両が保存されている。
この保存車輛のうち、新幹線車輛の一番手前の961形は車内まで見学することができる。半年前の状況では、この門の守衛所で直接許可を取れば見学することができた。公開日は金曜日~火曜日(年末年始休み・他都合により公開しない日もあり)で、見学受付時間は9時~15時30分。いまは果たしてどんな状況になっているのだろう。
また、在来線の機関車は、近くまでは立ち寄れないが、チェーンの外から望むことはできる。
それと、あまり告知されていないが、利府門を入った正面の建物1階には「JR東日本新幹線総合車両センターPRセンター」が開設(公開日時は上記の車輛公開と同じ)されており、両方をまとめて見学することができる。
PRセンターの室内にはプラレールやNゲージのレイアウトも設置されていたりと、入場無料としては充実の展示内容になっている。
今回は駅から少し離れた保存車輛がメインの紹介になったが、これらのかつて活躍した鉄道車輛の保存展示もある意味で記念碑的な存在と考え、駅近モニュメントの仲間としてセレクトさせていただいた。ただ、紹介した車輛の中で、ELトップナンバーたちの朽ち果て方には残念な気持ちになってしまった。
このような隔離された場所の、それも車輛工場(ゲージは違うが)の近くに保管してあるのだから、いずれは何がしかの形で保存展示されるのかなとも思うので、これからの動向には期待したい。
ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。