鉄道線としては現役の元可動橋

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所]JR和田岬線 兵庫-和田岬
当サイト2016年10月25日アップの「日本で現役唯一の跳開式可動鉄道橋梁」(←その記事はここをクリック)でJR関西本線 四日市駅構内扱いの場所にある末広橋梁を紹介したが、鉄道線としては現役で使用されている“元・鉄道可動橋”なら他にも存在する。それがJR和田岬線 兵庫-和田岬 間の兵庫運河に架かる『和田旋回橋』だ。

南西側に架かる道路橋からの、和田旋回橋の真横からの眺めで、左が兵庫駅方、右が和田岬駅方。車輛は朝夕しか走らない103系電車で、日中に訪ねると電車が全く来なくて現役っぽくないが、朝夕なら鉄道橋梁としては現役なのが解る。
ところで「元」と冠したのは、現在は回転機構が外されて可動部を開閉できないので水運的には通れない状態になっているからだ。

和田旋回橋の北東側からの眺め。左が和田岬駅方で、右が兵庫駅方。タイトル写真も同じ側面になる。
上々写真と同じ向きからで、桁は転車台の主桁のような形をしている。
センターの橋脚は円筒形で、レンガはイギリス積み。桁の腹板の垂直補剛材の上下端を曲げてあるのは英国設計の特徴でもある。

和田旋回橋の開閉方式は前述の末広橋梁の「跳開式」とは異なり「旋回式」で、センターにある丸い橋脚を縦軸に橋桁が水面と同じ水平方向に回転して水路の交通を確保する方式を採用している。橋梁は鋼鉄製上路式プレートガーダーで、橋長15.5m、径間数2、支間7.7m。竣工は1899年(明治32年)11月。元々はJR山陽本線の前身・山陽鉄道が建設した橋梁で、日本最古かつ最初の鉄道可動橋という称号を持つ。ただし、回転機構が外された年代は不明。

架線は橋梁の開閉の動きに関係なく張られている。すでに可動しないので当たり前と言われればその通りだが。なお、和田岬線は2001年7月1日に電化されている。
橋台もレンガで、写真では解り辛いが、やはりイギリス積み。

現役の可動式鉄道橋梁は現在、末広橋梁、和田旋回橋(こちらは可動橋としては現役ではないが)の2基しかない。しかし現役の可動式道路橋なら全国各地に見ることができる。鉄道とは関係ない構造物にはなるが、橋などの土木施設好きや、交通インフラがトータルで好きな方の間では、そんな場所巡りをテーマにした旅がすでにブームになりつつあるようなので、一例を取り上げてみた。

道路の可動橋梁は全国に散見できる。写真は天橋立の廻旋橋で、和田旋回橋と同じ開閉方式の旋回橋なので、例として載せてみた。ちなみに橋脚2本のうち左の円筒形の方を縦軸にして左2径間の橋桁が旋回する。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。

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