鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所]JR中央本線 塩尻駅
名古屋と長野を結ぶ特急『しなの』は、今でこそ全区間を列車の前後の向きを換えずに走り通すが、1982年5月17日に塩尻駅が現在の地点へ移転するまでは、旧塩尻駅で方向転換をしていた。
これは当時の旧塩尻駅の構造が、中央東西線同士がスルーで、篠ノ井線がその名古屋寄りから北方向に分岐していた配線だったからで、名古屋方-松本方 間を通し運転をする列車はここで進行方向を換えていた。駅を移転したのはこの解消に他ならない。
それに加え、特急『しなの 』の増発により塩尻駅で回転クロスシートを転換する列車が増えたことも理由として挙げられるのではないだろうか。似た例として、当サイト2015年8月24日アップの「JR東金線 大網-福俵 間にある謎の駅跡」(←その記事はここをクリック)では1972年7月15日から走り始めた回転クロスシートを備えた特急「わかしお」 の運転開始を目前にした同年5月27日に大網駅のスイッチバックを解消しているという内容で、塩尻駅でもこの状況が当てはまるのではないかと思われる。
旧塩尻駅は、現駅から中央東線 新宿寄りに400m程の地点にあった。ここは駅移転後も貨物駅として残され、通称「塩尻大門」として使用されていたが、2000年3月に同駅を発着する貨物列車が廃止されたことにともない、鉄道貨物の駅としても使用されなくなり、現在は車輛基地として機能している。
この旧駅跡への行き方は、塩尻駅東口の駅前広場の先の道を右に200m程進み、「塩尻駅入口」の交差点を左折、150mくらい先にある「大門八番町」の交差点を右に入れば突き当たりにある。
旧駅舎や旅客ホーム跡は残っていないが、ここが元駅前広場だった面影はあり、時の流れによる街の変遷を感じることもできるだろう。
塩尻駅構内には、旧駅時代に中央西線の一部だった新宿-名古屋 間を直通できる線路が短絡線として残っており中央東西線とのデルタ線を形成している。現在は定期列車が通ることはないが、訪れた時にはレールが輝いていたため、何かしらの車輛(または機械)が使用しているのかも知れない。
この短絡線の名古屋寄りの分岐地点へは、塩尻駅西口の駅前広場左手脇の道を南に線路に沿って500m程進むとたどり着ける。さらにその先150m程の場所にある跨線橋からは俯瞰で眺めることもできる。
現駅と旧駅の位置関係が解りやすいように、駅にあった周辺案内図の写真も掲載しておこう。
ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。