駅前広場にある鉄道系オブジェを訪ねる(1) 岩手県・花巻駅

鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所] JR東北本線など 花巻駅前

駅前ロータリーの鉄道にまつわるアートやモニュメントを訪ねる不定期シリーズ始動

2014年4月12日に運行を開始した「SL銀河」の出発駅として知られるJR東北本線・釜石線 花巻駅。その駅近にある鉄道を題材にしたアートとしては、2016年2月3日アップの 「宮澤賢治の世界へいざなうライトアップ2題」(←その記事はここをクリック)の中でブラックライトに浮かびあがる壁画『未来都市銀河地球鉄道』を紹介しているが、花巻駅周辺には、まだまだ鉄道を題材にしたオブジェやモニュメントがあるので、それらをまずは東口から紹介していくことにしよう。

東口のバス乗り場の先にあるSL列車が描かれた塔。元来の目的は垂れ幕用の竿だが、この日はたまたま1面に垂れ幕が掛かっていなかったので、眺めることができた。見られるのは運しだいだ。
東口のバス乗り場の先にあるSL列車が描かれた塔。元来の目的は垂れ幕用の竿だが、この日はたまたま1面に垂れ幕が掛かっていなかったので、眺めることができた。見られるのは運しだいだ。
東口の南(右手)側に建つホテルグランシェール花巻の西面に立つ「岩手軽便鉄道花巻駅跡」の説明板(左)。岩手軽便鉄道は現在のJR釜石線の前身になる。
東口の南(右手)側に建つホテルグランシェール花巻の西面に立つ「岩手軽便鉄道花巻駅跡」の説明板(左)。岩手軽便鉄道は現在のJR釜石線の前身になる。
上写真の位置から少し南側に行った場所にある「岩手軽便鉄道花巻駅跡」の碑。
上写真の位置から少し南側に行った場所にある「岩手軽便鉄道花巻駅跡」の碑。
上写真の位置から南を向くと、そこに建つなはんプラザの壁面に宮澤賢治が心の中に描いていたイーハトーブの世界をモチーフにした縦10m・横7mのモザイクタイルで表現した壁画がある。
上写真の位置から南を向くと、そこに建つなはんプラザの壁面に宮澤賢治が心の中に描いていたイーハトーブの世界をモチーフにした縦10m・横7mのモザイクタイルで表現した壁画がある。
上の壁画の左にあるからくり時計。宮澤賢治の童話「銀河鉄道の夜」がモチーフとのことで、SL列車が一周する。開くのは10時~22時の毎正時。
上の壁画の左にあるからくり時計。宮澤賢治の童話「銀河鉄道の夜」がモチーフとのことで、SL列車が一周する。開くのは10時~22時の毎正時。
駅前を横切る県道103号を南に200mほど行った「大通一丁目」バス停のベンチは背もたれがSL列車のレリーフになっている。
駅前を横切る県道103号を南に200mほど行った「大通一丁目」バス停のベンチは背もたれがSL列車のレリーフになっている。

東口の駅前ロータリーの北側にある東西連絡地下通路を通ると西口に抜けられる。こちら側にはかつて軽便鉄道の花巻電鉄の駅があり、ここから762mmゲージの線路により花巻温泉郷とを結んでいたが、1972年2月に花巻-花巻温泉 間が廃止になるとともに花巻電鉄の駅も廃止された。そんな西口には、アートではないが、その跡地を示す看板が建てられている。

西口への連絡通路の階段を上がった南側の目前に立っている「花巻電鉄『花巻駅』跡地」を示す看板。花巻電鉄の歴史も書かれている。
西口への連絡通路の階段を上がった南側の目前に立っている「花巻電鉄『花巻駅』跡地」を示す看板。花巻電鉄の歴史も書かれている。
上の場所から反対北側を向くと、軽便鉄道の線路跡らしいカーブの道が続いている。
上の場所から反対北側を向くと、軽便鉄道の線路跡らしいカーブの道が続いている。

また西口から南南西に500m程の地点には、花巻電鉄で活躍していた電車デハ3が保存されている。
この電車は1931年(昭和6年)に雨宮製作所にて製造された半鋼製ボギー車で「馬面電車」の愛称で親しまれていた車輛だ。

デハ3が保存されている材木町公園には、昭和初期に建てられた役場建築の旧花巻町役場が移築されており「花巻市民の家」として利用されている。
デハ3が保存されている材木町公園には、昭和初期に建てられた役場建築の旧花巻町役場が移築されており「花巻市民の家」として利用されている。
西口から南南西に500mほどの場所にある材木町公園に保存されている花巻電鉄デハ3。南方からの眺め。
西口から南南西に500mほどの場所にある材木町公園に保存されている花巻電鉄デハ3。南方からの眺め。
デハ3の西方からの眺め。
デハ3の西方からの眺め。
デハ3の北方からの眺め。
デハ3の北方からの眺め。
デハ3の東方からの眺め。
デハ3の東方からの眺め。
デハ3の北東側に立つ説明板。内容は花巻電鉄の沿革について記されている。
デハ3の北東側に立つ説明板。内容は花巻電鉄の沿革について記されている。

駅構内にも鉄道系アートが散見できる。
釜石線には1995年に「銀河ドリームライン釜石線」という愛称名がつけられたが、それと同時に釜石線全駅にもエスペラント語の愛称が付帯され、花巻駅は「チェールアルコ(虹)」の名が与えられた。
花巻駅構内のアートはこの愛称を元にして、「SL銀河」の運行開始を控えた前年の2013年末に、宮澤賢治の童話をモチーフとして整備されたオブジェだ。

JR花巻駅1番線プラットホームに立つ腕木信号のオブジェ。宮澤賢治の童話「シグナルとシグナレス」がモチーフになっているものと思われる。
JR花巻駅1番線プラットホームに立つ腕木信号のオブジェ。宮澤賢治の童話「シグナルとシグナレス」がモチーフになっているものと思われる。
駅構内のゴミ箱にも「GINGA DREAMLINE」のロゴが描かれている。
駅構内のゴミ箱にも「GINGA DREAMLINE」のロゴが描かれている。
駅売店では「原寸大ナンバープレート」も売られていた。品揃えや価格などは昨年のもの。
駅売店では「原寸大ナンバープレート」も売られていた。品揃えや価格などは昨年のもの。

この不定期連載では駅前や駅中に設置された「鉄道系アート」にテーマをしぼっているが、それに限らず、いろいろなジャンルのオブジェやモニュメントが建てられている鉄道駅は案外多い。そんな駅中や駅前にあるローカル・アートを列車の乗り換え時間の合間に散策して探し、鑑賞するような鉄道旅の楽しみ方もあっても良いのではと思い、シリーズを始めさせていただいた。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。