遠州浜松の謎の線路…さらにその上には軽便鉄道車輛!?

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[場所]JR東海道本線 浜松駅北北西約9km

静岡県浜松市のライブチャーチ浜松の正門前にナローゲージの線路が敷設されているとのトピックが知人よりもたらされたので、早速そこを訪ねてきた。
とはいえ、その情報で解っているのは「浜松のライブチャーチ」のキーワードだけで、他の位置などのデータはなし。ならばと、グーグルマップでそれらしい施設名を一つ一つピックアップしてストリートビューで探したところ、見つけたのがこの度紹介する「ライブチャーチ浜松 花川キャンパス」になる。

グーグルマップでは引き戸門扉のレールのようにも見えたが、訪ねてみると、そこにあるのは確かに鉄道のレールだった。
さて、マップで見つけはしたけれども鉄道での最寄り駅がないことが判明した。だがバス路線は周辺に2路線通っており、鉄道以外の公共交通機関でなら行くことはできる。ちなみに、筆者は北北西600mほどの地点にある43系統 引佐線のバス停「一里山」を利用した。浜松駅からだと15番のりばよりの乗車になる。
ライブチャーチ浜松へは、一里山バス停からなら大人の足で徒歩10分少々にて着くことができよう。
斯くして到着し眺めた結果、正門前を横切っている2条のレールは紛れもない鉄道線路であった。
この手の撮影では必須のことだが、まずは所有者の撮影許可を取り、また正門へ戻り線路の撮影と軌間のチェックを開始する。

上写真の門袖壁あたりから反対(南西)向きに眺めたトコロ。線路は直線のみで、先の塀の手前で行き止まっているのが判る。
線路の軌間は762mmで、それはまさに軽便鉄道ゲージだ。
そして線路の北東側の先には鉄道車輛?が停まっている。
軌間は762mmの日本の軽便鉄道でよく採用されたナローゲージだった。そして線路の先へ目をやると、そこには青い鉄道車輛が居るのが窺えた。

■青い車輛の正体は?
線路端に停まっている車輛は凸型の蓄電池機関車だった。さらに奥には客車の姿も確認できる。
まずは手前の機関車から眺めていこう。

停まっていたのは凸型の蓄電池機関車で、次位には客車も居り、さらに奥には凸型蓄電池機関車がもう1両見える。
手前の凸型蓄電池機関車のキャブ内。
手前の凸型蓄電池機関車の反対(北東)側。
年齢50代以上の方ならこの機関車にピンとくる人は多いと思う。
そう、かつて西武鉄道山口線が2本のレールの鉄道だった時代に、その上を走っていた車輛に他ならない。
形式は西武B11形になる。

西武鉄道山口線が軽便路線だった頃の凸型蓄電池機関車B11形牽引列車。1982年5月撮影。同路線は何度か訪ねていて、この頃はたいがいカラーフィルムを入れたカメラを別に持っていって、モノクロカメラとの2台を併用していたハズなのだが、凸型蓄電池機関車の写真はナゼかモノクロしか見つからなかった。謎である(笑)。
西武山口線はいまでこそレオライナーの愛称を持つ案内軌条式鉄道になっているが、1984年5月13日まで(営業休止日は翌5月14日)は軌間762mmの軽便路線だった。このことは「日本で最後まで残ったSL牽引の軽便列車が運行されたのは関東大手私鉄の路線だった。」という逸話も語り継がれているので、現役を知らない世代でもご存知の方は多いであろう。
次は続く後ろの客車を見てみよう。

手前の凸型蓄電池機関車と次位の客車との間の連結器は朝顔カプラー。
客車の南西側。窓枠は角型のサッシだ。
客車の北東側。
客車の車内。
この客車は西武21形になる。なお、ココには西武21形客車があと3両の計4両居るが、側窓の形が2タイプに分類できる点を覚えておいていただき、後で眺める他の西武21形を見る参考にしていただけたらと思う。
では、さらに奥に停まっている機関車と客車を見ていこう。

上の位置から反対(北東)を向くともう1両の凸型蓄電池機関車。と、隣には客車がもう1両居た。
奥の凸型蓄電池機関車のキャブ内。
奥の凸型蓄電池機関車の北側。
奥の客車は敷地外の道路から眺めることができる。こちらの窓枠は上にRが付いている。

■敷地の反対側の駐車場にも西武21形客車2両
一里山バス停から徒歩でくると位置的に手前になるが、正門の反対(北)側敷地内には駐車場があり、そこにも西武21形客車が2両保存されている。
ということで、こちらも紹介しよう。では、まず駐車場出入口手前の西武21形客車から。

駐車場の手前の客車の西側からの眺め。
駐車場の手前の客車の東側からの眺め。窓枠の上にRが付いている。
上写真でいうトコロの左の台車のアップ。
そして次は奥の西武21形客車。

駐車場の奥の客車の南側からの眺め。
駐車場の奥の客車の東側からの眺め。窓枠のサッシは角型。
駐車場の奥の客車の西側からの眺め。左下には先代西武マークも残っている。
上々写真でいうトコロの右の台車のアップ。
上でも側窓の分類は記したが、西武21形客車と一言で括っても、他にも細部が異なっていたりして、眺めていて面白い。

保存しているライブチャーチとは…

西武鉄道山口線の車輛を保存しているライブチャーチとは? 知りたい方のために、訪問時に筆者が貰ってきたパンフレットをココで掲載してしまおう。
まずは、西武山口線の車輛が居る浜松市中区のライブチャーチ浜松花川キャンパスから。

右がライブチャーチ浜松花川キャンパスのパンフレットで、左はハレルヤ愛児園のご案内。
グーグルマップでは左の「ハレルヤ愛児園」の名称の方が先に出てくるので、ググる時にはコチラの名で探した方が見つけやすい。
ところで、ここの車輛たちだが、いつの時点まで動いていたか気になった方も居るかと思うが、上のハレルヤ愛児園のフェースブックには2015年10月14日(水)に運行された記録が残っているので、ほんの6年前には動いていたことになる。
それでは、次は総体的なパンフレット。

ライブチャーチの2021年9月5日発行のパンフレットで、その表。
その裏。左上の写真が主任牧師の居るライブチャーチ寸座の外観。
興味を持った方のために、下にURLを載せておこう。
https://livechurch.jp

2024年6月7日筆者追記:ここで紹介の車輌たちは、2024年6月9日(日)に誕生する関水本線「KATO Railway Payk(鶴ヶ丘公園)」にて保存予定なので、すでに搬出済でこの場所には居ません。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。


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