加悦鉄道 在りし日の形跡を伝える要所は SL広場 以外にもある

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[場所]京都丹後鉄道宮豊線 与謝野駅 南西約5km

京都府の日本海側にある鉄道保存展示施設といえば「加悦SL広場」が有名で、訪れた方も多いだろう。
加悦SL広場は、1996年11月に現在の位置である加悦鉄道 大江山鉱山駅跡に、同鉄道 加悦駅跡地で展示していた車輛などを移転して開業した施設で、現時点で27両を保存展示しており、そのうち11両が動態保存されている。
ところで、ここに訪れた人の中で、過去の加悦駅舎を知っている方は、入場口兼展示室になっている木造駅舎の外観に何か違和感を抱いたのではないだろうか。

これは「加悦SL広場」の復元加悦駅舎。建っている場所が違うので、違和感があるのは当たり前だが、それ以外にも何かが違う。加悦SL広場HP http://www.kyt-net.jp/kayaslhiroba/
まぁ復元駅舎なので、厳密に細部まで同じでないのは仕方がないが、何かが違う。と、思っていたところ、加悦SL広場 から北へ3kmほどの場所に「旧加悦鉄道加悦駅舎」の実物が残っており、在りし日の姿を伝えていることを知り、訪ねてみた。

こちらが実物の旧加悦駅舎。上写真の SL広場 の加悦駅舎はレプリカなので、細部までのコダワリよりは機能性を優先させたのかも知れないが、とにかく出入口の位置が全く違うことが解るだろう。ちなみに、実物の旧駅舎の方も出入口がある待合室部分は移転に耐する強度の関係で復原モノになっている。
タイトル写真にある腕木信号機の脇に立っている説明板。旧加悦駅舎の歴史が記され、さらに1999年~2001年に曳き移転と修理がおこなわれる以前の1996年(平成8年)に「与謝野町指定文化財[建造物]」に指定されていることを伝えている。
旧加悦駅舎を北東側から眺めたところ。こちらの平屋部分は当時の実物を修理したモノ。現在はトイレなどになっている。
二階建て部分を西側からアップで撮影。北西側からヒキで写真を撮れる場所がなかったので、このアングルでご勘弁を。
旧駅舎を南西側からも撮りたかったが、この日は丁度、後日にあるイベントの準備でミニ鉄道を整備している方のクルマが停まっていたため、こちら側の写真もこんなアングルでご勘弁を。
さて、こちらの実物駅舎も、過去の加悦駅を知っている人から見ると、何か違和感があるのではないだろうか。
実は、実物駅舎がもともと建っていた場所は現用の与謝野町役場加悦庁舎の位置で、1999年~2001年の曳き移転と修理により現在の場所に持ってきて、180度向きを変えて据えられている。
というわけで、駅舎は位置が変わり、元は駅前広場側だった面がかつての線路側を向いている。

旧駅舎の曳き移転を伝える説明板。待合室の平屋部分は新しい材で復原されたことを記している。
したがって、駅舎は実物とはいえ、場所が違えば向きも違う。違和感アリアリの位置関係なのだ。
この 旧加悦鉄道加悦駅舎 だが、上の方に掲載の写真キャプション中でも記した「与謝野町指定文化財[建造物]」に指定されている。そして移転後に室内が整備され「加悦鉄道資料館」として活用されていて、開館日には入場することができる。そんなわけで、どんな展示があるのか眺めていってみよう。

入口を入ってすぐの待合室。右の扉が上々写真のクルマの向こうにある扉の反対側になる。
待合室の次の、二階建て部分の一階の部屋。とにかく鉄道用品の展示がいっぱい。
上写真の場所からの反対側の眺め。壁には昔日の写真などが飾られている。
その次の部屋に足を踏み入れた目の前の光景。Nゲージのジオラマレイアウトがある。背後の立て掛けたボードから察すると、エンドレスの運転ができる構造になっているのだろうか。
上写真の場所からの反対側、待合室方の眺め。汽笛の音が聞けるシステムがあったりする。
上写真にある地図パネルのアップ。加悦鉄道がかつてドコを走っていたのかが図示されていて、廃線跡好きも楽しめそうだ。
上々写真で地図パネルの向こうに展示されている写真パネル類のアップ。下のショーケースには加悦鉄道に縁のある鉄道模型が陳列されている。
鉄道利用で訪れるには駅からやや遠いが、丹後海陸交通のバスの与謝線・福知山線が与謝野駅から日中ほぼ2時間おきに走っているので、それなりには鉄道で行きやすい。なお面白いことに、街道筋から外れたところにある 加悦鉄道資料館 最寄りの「加悦庁舎」バス停や、ショッピングセンターがある「ウイル」バス停にはバスが本通りから逸れて脇道にチョロチョロと入っていくのだが、筆者がそのバス路線を利用した時に下車客が一番多かった「SL広場西」バス停は、SL広場 から約300mも離れた地点のバス通り街道筋にあり、そんな場所で降ろされてしまって、こんな公共交通機関利用客無視の路線設定には笑う他なかった。

開館時間 9時~17時(最終入館は16時30分まで)
開館日 土曜・日曜・祝日・その他臨時に定める日
旧加悦鉄道加悦駅舎の問合せ先:0772-43-0232

与謝野駅の駅ナカにも昔日を伝える展示品

京都丹後鉄道宮豊線と丹後海陸交通バスとの乗り換え駅である 与謝野駅 コンコースには「丹後山田駅資料室」が設けられていて、鉄道用品などが展示されており、日中には見学することができる。
なお、「丹後山田駅」とは、同駅が与謝野駅と改称する前の前に名のっていた駅名になる。

京都丹後鉄道宮豊線 与謝野駅の駅舎。写真は北北西からの眺めで、左側の宮津寄り部分に「丹後山田駅資料室」がある。
「丹後山田駅資料室」は2007年に開設された。SL広場 方面からの バスが着いて直近の列車までの待ち合い時間に眺めるのに丁度良い展示量だった。

開館時間 8時~17時
開館日 無休

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。