京津線電車が京都で併用軌道を走っていた昔日を慕べる区間

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[場所]京阪電鉄石山坂本線 浜大津-三井寺
京阪電鉄京津線の併用軌道というと、現在では浜大津駅から約600mほどの区間のイメージしかないが、1997年10月12日に京津線電車が京都市営地下鉄東西線へ御陵駅から乗り入れを開始する以前は京津三条(現・三条京阪)-京阪山科 間も軌道が地上に敷設されていて 、その途中には併用軌道も存在しており、高床・ステップなしの電車も活躍していた。

このことは、地下鉄へ乗り入れを開始したのが平成の世になった近年のため、知っている方は多いだろう。さて、そんな京都市内にかつて存在した高床の電車が走る併用軌道区間だが、当然ながら現在は京都市内では見ることができない。ところがそんな当時の光景を懐古させてくれる併用軌道区間が石山坂本線に存在する。
なお、昔日を慕べるかについては、記者の個人の感想である点を先に一言添えておきたい。

事情により京津線の画像でスキャンしてあったのが時代祭のしかなくて申し訳ないが、これが三条通東山区側の併用軌道区間で、三条京阪-蹴上 間が併用軌道になっていた。写真は東山三条-蹴上 間にて1979年10月22日撮影。車輛は500型502号で、車体は現700形706号に流用されている。なお、この頃の急行・準急運用に就いていたステップなし車はこの500形以外はまだ京阪特急色を纏っていた。
上写真と同日の1979年10月22日に東山三条駅付近で撮影した80型84号。こちらはステップ付で普通運用に就いていた。
三条通山科区側は日ノ岡駅西南西(京津三条寄り)150mほどの地点~御陵(旧)間が併用軌道になっていた。 写真は九条山-日ノ岡 間で車輛は600形。1997年10月5日撮影のHi8動画より切り出し。

京津線といえば上記の浜大津駅から約600mほどの併用軌道には、京都市営地下鉄東西線にも乗り入れる電車の800系高床16.5m車×4連が道路をゴロゴロと走っており、これが同線の名物にもなっていて世間に知れ渡っていよう。だが本日アップ分のこの記事では、そちらではなく、かつての京阪大津線系統を懐古することを主題としているので、石山坂本線 浜大津-三井寺 間の併用軌道区間を、急遽紹介させていただいている。なぜなら、大津線で運用している車輛のカラーリングを2021年3月完了予定で京阪本線系の一般車と統一したイメージへの塗り替えが進められており、石山坂本線用の電車の600形と700形も塗り替えられる予定になっているので、後述する場所で「若草色×青緑色ツートン」の高床15m車×2連が走る、かつての京津線の光景を慕べるのはあと3年ほどになったからだ。
ちなみに、京津線の800系も京阪本線系の一般車と同じイメージへの塗り替えが進められているが、こちらの併用軌道区間はまた別の機会に紹介したいと考えている。

京津線浜大津駅から京都洛中へ向けて発車してゆく800系を駅前の歩道橋上から撮影。16.5m車×4連が道路の真ん中の複線を堂々と走る姿は、大津の風物詩ともいえるだろう。なお、画面上方(南南西)へ延びているのは京津線で、左右に横切っているのが石山坂本線になり右(西北西)側に併用軌道区間が延びている。この800系もいずれ京阪電車一般車色と同じイメージカラーに塗装変更されるはずだ。ちなみに本編掲載写真のうち16:9サイズはすべてFH動画からの切り出しになる。
浜大津駅前の歩道橋上からの西北西の眺め。車輛は700形701-702編成で、「80型」リバイバルカラーに塗られている。画面左上方へ延びているのが石山坂本線 坂本方面で、手前を左にカーブしていくのは京津線。
大津線系統の電車は順次上半レスト・グリーン、下半アトモス・ホワイト、境界にフレッシュ・グリーンの帯が入る京阪本線系電車一般車色と同じイメージ(本線一般車は下半がアーバン・ホワイトのためこう表現)のカラーリングに変更されつつある。車輛は700形707-708編成で、京阪石山-唐橋前にて撮影。

石山坂本線に存在している併用軌道としては浜大津駅西北西にある交差点部分が有名だろう。しかし、その先300mほど、三井寺駅の石山寺寄り手前50mくらいの地点までに渡った部分も路面区間になっている。かつての京津線の光景を慕べる場所とはここになる。ではそこがどんな雰囲気なのかを眺めていこう。

では、浜大津-三井寺 間の併用軌道区間を、浜大津側から眺めていこう。ここは浜大津駅から坂本寄り250m程の地点からの石山寺方の眺め。高床15m車グリーン濃淡ツートン・カラーが路面区間を走る姿を見て「当時の光景を慕ぶ」がテーマと言っておきながら、初っ端にラッピング車の登場となってしまった。電車は600形609-610比叡山・びわ湖ラッピング編成。
浜大津駅から坂本寄り200m程の地点からの坂本方の眺め。上写真の右の電柱あたりからの撮影になる。電車は600形607-608編成。
上々写真と同地点からの反対向き、坂本方の眺め。電車は700形705-706ちはやふるラッピング編成。
浜大津駅から坂本寄り350m程の地点からの石山寺方の眺め。上写真の左端のカーブが始まるあたりからの撮影になる。電車は700形701-702編成。80型リバイバルカラーは「80型」登場55周年を記念して復刻された塗装。
上写真と同地点からの反対向き、坂本方の眺め。浜大津側から続いた併用軌道は、ここから専用軌道になる。
電車は600形617-618編成。

かつての京津線が走っていた三条通りよりはかなり狭いが、まぁ面影を慕ぶ程度に立ち寄るなら丁度良い場所かなとは思う。
余談になるが、この後に以前当サイトで紹介したことがある大阪上本町の「鉄道バー駅」(←その記事はココをクリック)に定番のごとく訪れたのだが、立ち飲み隣のお客氏に「何処に行ってたの?」と訊かれたので「いしやまざかほんせん」と答えたら、すかさず「たわらほんせんってのもあるな」とツッコミを返された。サスガ関西。お後がよろしいようで…。

上写真の場所から少し石山寺寄りの地点からの坂本方の眺め。電車は600形619-620編成。かつての京津線を想起させてくれるカラーリングもあと3年以内には見られなくなる。

■2021年2月1日筆者追記:石山坂本線の旧塗装車は2021年2月1日(月)にラストランを果たしました。

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。大津線系統の駅名は2018年3月の変更前の名称で標記しています。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。