鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所] 元・国鉄日中線 熱塩駅
「日中に走らない日中線」と揶揄された元・国鉄日中線は、福島県会津地方の喜多方駅と熱塩駅を結んでいた11.6kmの鉄道路線。上記の皮肉の通り1日朝夕夜3往復しか列車が走らなかったような閑散路線ということもあって、1981年9月18日に第1次特定地方交通線として廃止承認。1984年3月31日に『さようなら日中線号』が運転され、翌日付で全線が廃止された。だが、終着駅であった熱塩駅の駅舎は『日中線記念館』として保存され、往時の面影を今でも見ることができる。
そもそも日中線は、日光線-奥羽本線を結んで東北南部を縦貫する野岩羽線構想の一翼として、喜多方市と米沢市をつなぐ目的で計画された路線で、1938年(昭和13年)8月18日にその一部である喜多方-熱塩 間が開業したもの。
同駅舎もこの時に造られた木造の建物で、欧風のスタイルが特長であった。そして廃線後も残り、1987年に整備され『日中線記念館』として開館。日中線に関する資料などを展示している。
なお、この駅跡は2009年2月6日に、近代化産業遺産に認定された。
ちなみに「日中線」の路線名はこの熱塩駅から北北東4km程の場所にある日中温泉に由来している。
では、駅舎の細部などを眺めていくことにしよう。
駅構内の線路は撤去されたが、北北西方に国鉄キ100形ラッセル車『キ287』と国鉄60系客車『オハフ61 2752』が保存展示されている。
日中線記念館へのアクセスは、同館前を通る路線バスが2012年9月30日に廃止されたため、現時点で公共交通機関利用で行く手段としては予約制の乗り合いタクシーしかない。
ただ、最寄り駅のJR磐越西線 喜多方駅の駅近くにはレンタサイクル店が何軒かあるので、気候の良い時期には、自転車を借りて日中線記念館を目指してサイクリングするのも楽しそうだ。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。