鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所]江ノ島電鉄 七里ヶ浜-鎌倉高校前 極楽寺-稲村ヶ崎
江ノ島電鉄は鉄道事業法による鉄道だが、腰越-江ノ島 間には併用軌道が国交省の特認を得て存在しているのは有名で、商店街の道路の真ん中を鉄道車輛が堂々と走る光景は、この鉄道の代表的な景色として定着している感がある。
しかし、江ノ電にはこの区間の他にも、併用軌道が3箇所存在している。それは、極楽寺-稲村ヶ崎 間、稲村ヶ崎-七里ヶ浜 間、七里ヶ浜-鎌倉高校前 間の一部にあり、こちらは線路が道路の路肩に寄り添うようにバラスト道床で敷かれているため解り辛いが、ここも併用軌道の扱いになっている。
ではそのうちの、線路と道路の間にガードレールが設置されていないため独特の風景を作り出している2区間を眺めていくこととしよう。
まずは七里ヶ浜-鎌倉高校前 間の併用軌道
道路の路側帯に寄せて線路を敷いたスタイルの併用軌道は、鉄道線としては熊本電鉄 藤崎宮前-黒髪町 間にも存在しており、こちらはレールの頭部と路面のレベルが同じになっているため、また違った意味で情緒ある景色を作りだしている。この場所は、いずれ機会があれば、ぜひ紹介したいと考えている。
そして極楽寺-稲村ヶ崎 間の併用軌道
このような併用軌道を、我々の仲間内では『路側軌道』と呼んでいる。道路の真ん中を線路が通る併用軌道と、道路の路側帯に寄り添うように線路を敷いた併用軌道を区別するために使用していた言葉だが、それがずっと一般用語だと思っていたのが、この記事を書くにあたり調べてみると、造語であるのかも知れないということに気づいてきた。
ということではあるが、両者を分けて表現するために、タイトルでは 路側軌道 という言葉を使わせていただいたことをお許し願いたい。
路側軌道の存在は、路面電車にまで範囲を広げれば、高知県の とさでん交通 の一部や、2015年12月20日に開通した北海道の札幌市電 西4丁目-すすきの 間に見ることができる。また、専用鉄道の中にも 路側軌道 のような線路の敷き方をしている所があるので、探してみるのも面白いかもしれない。
せっかくなので この踏切の写真も載せてしまおう
江ノ電の鉄道線の営業キロは10.0kmとコンパクトな路線でありながら、周辺には観光地が多く、また線路自体に個性があるので、沿線を散策すると、人それぞれのお気に入りの場所が見つかるかも知れない。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。