鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所] JR城端線 福光駅
JR城端線を利用したことがある方なら、福光駅に到着した時に、高岡駅方から見て車窓右手(西側)の壁にSLが牽引する混合列車が描かれているのを目撃し、それが何なのだろうと疑問に感じた人は多いのではないかと思う。
これは実は駐輪場で、平成の町村合併で南砺市になる前の旧福光町が主体となって「福光駅前地区整備事業」として1983年(昭和58年)度から3ヵ年事業で「富山県まちづくりモデル事業」の認可を受けて実施された時に造られたもので、当該の駐輪場をはじめ、駅舎前の歩道に無散水消雪装置を施したスプリング・プールや自動車駐車場、駅前ロータリー中央部を飾るモニュメントなど関連施設とともに整備され、1985年(昭和60年)度に全体事業を完了した施設の中のひとつなのだ。
では、なぜ列車の絵が描かれているのか?やはりそれが当サイトの読者にとっては疑問だろうと思い、記者が富山県南砺市役所へ質問を投げかけてみた。そして、この回答が南砺市 市長政策室 市民協働課 広報係さまから返ってきたので、その原文を下記に記そう。
「この自転車駐輪場は昭和59年に完成。プラットホームから見るとD51機関車の絵が描かれたこの駐輪場は、鉄骨平屋建421.61平方メートル、収容台数343台で、入口には「日本海」や「白山」など、かつての国鉄特急列車の銘板が掲げられています。
この駐輪場のデザインは、旧福光町が整備を進める中で協議を進めてきた福光駅前地区まちづくり協議会の構成団体の一つである「LOVEふくみつ推進委員会(※)」が提案したデザインが採用されたようです。
(※)LOVEふくみつ推進委員会は、旧福光町商工会青年部、旧福光町中央農協青年部、旧福光町連合青年団、となみ青年会議所福光コミュニティ委員会などで構成されたまちづくり団体」
このようなデザインを提案したということは、旧福光町の青年部や青年団の中に鉄道好きがいたことは確かと思われるが、それを採用した町も粋といえそうだ。では、その混合列車の車輛をひとつづつ眺めていこう。
また、上記本文にもあるが、駅前ロータリーの中央部にはモニュメントが2つ建立されている。それは「巴御前終焉の地」と「棟方志功躅飛飛沫隈暈發祥之處」の碑で、巴御前は源義仲(木曾義仲)に仕えた女武将(記者的には源義仲の妻だと思っていたので、ある意味後日に調べて勉強になりました)、棟方志功は20世紀を代表する板画家だが、しかし当サイトの読者にはやはり見ておきたい鉄道系のモニュメントがさらに駅舎の南隣城端寄りにある。
それが下の写真で紹介している「蒸氣機関車動輪」だ。
富山県南砺市といえば、世界遺産の五箇山合掌造り集落や利賀(とが)そばの郷などの有名観光地を擁している。また、鉄道に乗ることを主眼とした旅行をする人たちにとっては終着駅である城端駅を訪れる方は少なくないだろう。
いずれの旅行に関しても、観光のルートにこのようなスポットを入れるのも面白いかなと思うので、JR城端線に乗車のおりには、訪問先のひとつに加えてみてはいかがだろうか。
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[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。