現役では日本一古い明治時代の橋桁 フラワー長井線篇

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山形鉄道フラワー長井線 四季の郷-荒砥

最上川は山形県のみを流れる流路延長229km一級河川だが、この川には明治時代に製造された橋桁を移設使用している現役の鉄道橋梁が何と2本ある。そのうちの1本はJR左沢線 羽前長崎-南寒河江 間に架かる最上川橋梁で、2020年9月26日アップ「現役では日本一古い明治時代の橋桁 JR左沢線篇」で紹介している。
さて、この回で紹介するのはもう1本の方、山形鉄道フラワー長井線 四季の郷-荒砥 間に架かる最上川橋梁(荒砥鉄橋)だ。

県道11号荒戸橋上の左岸寄りから眺めたトラス桁部。左が荒砥方、右が四季の郷方。車輛はYR-880形。
なお、橋梁の撮影区間は全て 四季の郷-荒砥 間なので橋梁写真のキャプションにおける区間の表記は省略させていただく。
それと、同橋梁と、JR左沢線 羽前長崎-南寒河江 間の最上川橋梁は、本サイト2015年9月30日アップ「東海道本線揖斐川橋梁に並行して架かる謎の橋」の中でも少し触れているので、こちらもご覧いただくと、この橋桁の何たるかが解るので、併せて読んでいただければありがたい。

右岸(荒砥)側下流方から眺めた最上川橋梁全景で、左の3連トラスが現役鉄道路線日本最古の橋桁になる。
右岸上流方からの眺め。
右岸下流方に立つ説明板。
山形鉄道フラワー長井線の最上川橋梁は、同線の前身である鉄道省長井軽便線が長井線と改称した翌年の1923年(大正12年)4月22日に 鮎貝-荒砥 間が路線延長された時に供用を開始した鉄橋で、この場所に架設されたのは大正時代になるが、このうち荒砥側に架かっている橋桁3連は1886年(明治19年)に製造され、元々東海道本線木曽川橋梁に1887年(明治20年)から1914年(大正3年)まで使用されていた橋桁を改造移設した桁で、現役鉄道橋梁としては上記JR左沢線の最上川橋梁の橋桁とともに日本最古の橋桁になる。

■右岸側
まずは、現役鉄道橋梁としては日本最古の橋桁を右岸(荒砥)方から眺めていこう。

右岸下流方からのダブルワーレントラス桁3連のアップ。
橋門構と車体の大きさ比較。車輛はYR-880形。
こちらも橋門構と車体の大きさ比較。車輛はYR-880形。
下弦材と横桁の関係。
つづけて、荒砥側の河原に降りて橋梁の下を観察してみよう。

橋脚は大正時代のモノ。
橋台も大正時代のモノ。補修の跡は見受けられるが…。
桁を下から見上げたトコロ。縦桁の幅(1,435mmゲージ用?)とレールの幅(1,067mmゲージ)が一致していないのは気になるが、コレで明治20年から何もトラブルが起きていないのだから宜しとしよう。
線路内には立ち入りできないので、右岸側橋門構は車内からの前面展望にてお見せしておく。
木曽川橋梁から移設された橋桁3連は錬鉄製単線ダブルワーレン下路ピントラスのスパンは各150ft。ただし各桁の長さは、木曽川橋梁時には200ftだったモノを、移設時に150ftに短縮して架設されている。
設計は英国人のC.ポナールで、製造は英国のパテント・シャフト&アクスルトゥリー社。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の技術と資材を輸入して製造された。そして、こちらのトラス桁が現役鉄道橋梁としては日本最古の橋桁だ。

■荒砥橋からサイド
次は、最上川橋梁の下流(北)側に並行して架かる県道11号荒砥橋上から同橋梁のサイドを眺めていこう。

左が荒砥方、右が四季の郷方。
荒砥橋上やや四季の郷寄りから眺めた橋門構と車体の大きさ比較。車輛はYR-880形。
東海道本線木曽川橋梁のC.ポナール設計のパテント・シャフト&アクスルトゥリー社製ダブルワーレン下路ピントラス桁が竣工からわずか27年間で架け替えられた理由は、通過する蒸気機関車の大型化に伴う強度不足が背景といわれている。

■左岸側
そして、左岸(西)方よりトラス桁を見てみよう。

左岸からダブルワーレントラス桁はかなり離れている。左が下流。
左岸荒砥橋袂付近から望遠レンズでトラス桁を撮ってみた。
左岸上流からの眺めで、プレートガーダーは12連ある。
プレートガーダー部分を走るYR-880形。左が四季の郷方。タイトルとの連続写真になる。
ただし、左岸側のトラス桁は、土手からプレートガーダー桁12連の遥か先にあるので、肉眼で観察するとなるとかなり厳しい。
ということで、車内からの前方展望にて撮った写真にて見ていただくことにしよう。

ワーレントラスの左岸寄り橋門構を、四季の郷側→荒砥方に向かう車内から前面展望で眺めたトコロ。
左岸寄り橋門構の上写真とは逆向きの中側をワーレントラス内からの四季の郷方に前面展望で眺めてみた。
ワーレントラスの中からの荒砥方の前面展望での眺め。
それほどの歴史ある貴重な構造物であるため、2008年に近代土木遺産として「土木学会推奨土木遺産」に推奨、2009年に経済産業省から「近代化産業遺産」に選定されている。

左岸寄り橋門構と車体の大きさ比較。車輛はYR-880形。
以前の左沢線最上川橋梁の記事の時にも記した個人的考えになるが、架け替えられたのは車輛の大きさも関係しているとも思ったが、上写真を眺めた限りでは橋門構の高さは支障していないようだ。
疑問からの憶測だが、まぁ鉄道施設・設備を巡る旅には、そんな思いを馳せる楽しみもあるので、再び書いてみた。

■鮎貝駅の最上川橋梁の絵画
荒砥駅の現隣駅 四季の郷 駅が2007年10月13日に開業する前まで隣駅だった 鮎貝 駅には、最上川橋梁を描いた大判の絵画が飾られている。

鮎貝駅に展示されていた鮎貝小学校の生徒による絵画。
このような、小学生による作品の展示があるあたり、最上川橋梁が地元から愛されているのが伝わってくる。

■荒砥駅に着いてから発見したフリー切符
実は筆者は山形鉄道フラワー長井線を訪ねるにあたり「秋の乗り放題パス」を使用して日曜日に訪問したのだが、山形鉄道の運賃を安く上げるべく今泉までは米沢から米坂線を利用し、今泉↔︎荒砥 間は山形鉄道に乗車した。そして荒砥駅に着いて見つけたのが下の「お得な切符」のご案内…。

荒砥駅で見つけた「お得な切符」のご案内。
今泉-荒砥が620円で往復1,240円。おそらく赤湯駅にもこのご案内はあっただろう(予想です)から、赤湯乗り換えをしていたらそれを見つけて、240円安く挙げられたかも知れない。まぁ世の中、そのようなモノである(笑)。

■2022年8月23日筆者追記:フリー切符は車内で購入できるそうです。

長井線全通100年ロゴマーク募集

2023年4月22日に長井線全通100年を迎える。これを記念するロゴマークを山形鉄道株式会社では募集している。
応募締め切りは2022年9月16日必着。
詳しくは下記URLにて。
https://flower-liner.jp/topics/logo_bosyu/

ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。