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[場所]近畿日本鉄道大阪線 西青山駅
剛体架線とは、一般的にはトンネルなどの天井に支持碍子を介して取り付けたアルミ合金製T形材の下にイヤー・イヤーボルトでトロリー線を固定した架線のことで、地下鉄などに多く見られる。なので、地下鉄を多く利用する人の剛体架線のイメージはそのようなモノだろう。
ところで近鉄線にもトンネルや地下区間があるが、この一部区間では剛体架線が採用されている。ただ近鉄の場合はその中に独特の剛体架線が張られた所がある。
近鉄独特の剛体架線とは、一見シンプルカテナリorコンパウンドカテナリに見えるが、ハンガーには剛体が吊るされていて、そこにトロリー線を取り付けているというタイプで、「吊架鋼体シンプルカテナリ」「吊架剛体コンパウンドカテナリ」と呼ばれており、コレが張られているのは、1970年3月15日開通の難波線が前者と、1975年11月23日完成の大阪線新青山トンネルおよび前後の伊賀上津-伊勢石橋にあるトンネル内が後者になる。
メリットとしては、一般的な剛体架線では列車速度は90km/hに制限されるが、吊架剛体コンパウンドカテナリでは130km/hに制限速度を引き上げられる。
さてそれならば、両方式が混在する路線で、地上線のカテナリ架線とトンネル内や地下線の吊架剛体カテナリ架線が切り替わる地点はどんな構造になっているのか。気になっている人も多いのではないだろうか。実はカテナリ架線⇔吊架剛体カテナリ架線の切替部分を駅プラットホームから間近に見られる駅が大阪線に一つある。
とはいえ、タイトルと上の写真や本文から、それが西青山駅なのはバレバレであるが(笑)。
そこで、切り替え地点はどんなスタイルなのかが気になったので、それを確かめるべく西青山駅プラットホーム東側端を訪ねてみた。
では1番線ホームから眺めていこう。
近鉄タイプの吊架剛体カテナリ架線が張られたトンネルはまだまだある
吊架剛体コンパウンドカテナリ架線が張られた場所というと本記事で紹介の 新青山トンネル がクローズアップされがちだが、まだ他にもある。とはいえ 新青山トンネル を含む同じ 伊賀上津-伊勢石橋 間に限られるが、吊架剛体シンプルカテナリ架線にまで範囲を広げれば、難波線の地下区間が同タイプの架線が張られた区間に含まれる。
それらの切替部分は駅から間近では眺められないが、電車前後のかぶりつき位置から眺められる(カーテンが開いていればだが)ので、まあ前面展望ができる特急電車とかに乗ってこの辺を通る機会があったならば、吊架剛体コンパウンドカテナリ架線のことを気に留めておくのも一つの楽しみかも知れない。
ちなみに、一般的な剛体架線⇔シンプルカテナリ架線切替部分を2019年10月11日アップ「カテナリ架線⇔剛体架線切替部分が間近に見られる駅」で東葉高速鉄道線 船橋日大前駅の記事で紹介しているのと、新青山トンネルの西青山で撮影した「カテナリ架線⇔吊架剛体カテナリ架線の切替部分通過」動画を1シーン(約15秒)アップしてあるので、合わせて見ていただけるとありがたい。
筆者補足:吊架剛体コンパウンドカテナリ架線⇔コンパウンドカテナリ架線切替部分が近鉄大阪線にまだあることが判明いたしましたので、補足記事を2020年4月14日にアップいたしました。
ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。