国内で現役腕木式信号機が活躍する唯一の鉄道営業路線

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[場所]津軽鉄道(つてつ)津軽鉄道線 五所川原駅・金木駅

青森県の津軽鉄道線は、冬期になるとロッド式DL牽引の客車によるストーブ列車が運行されることで有名で、レトロ感たっぷりの汽車旅が味わえる場所として好評を得ている。そんな同線にはレトロな旅情を齎してくれるもう一つの演者がいる。それが、この度紹介する現役の腕木式信号機で、津軽五所川原駅と金木駅に、計3コが存在している。

津軽五所川原駅に到着する津軽21形103。津軽中里寄りから津軽五所川原方の向きに後追い撮影なので場内信号は「進行」現示になっている。信号機上部の電線は夜間の灯火用電源のためので、それをたどっていくと津軽五所川原駅があるのが窺える。
腕木式信号機といえば、一昔前までは国内各地で見られたが、JR線上では2005年6月28日に八戸線 陸中八木駅にあった腕木式信号機が撤去され消滅し、他私鉄では福島臨海鉄道で宮下駅にて使用していた腕木式信号機が2015年1月13日に廃止され、それ以後は津軽鉄道が腕木式信号機3コを現役で使用している日本唯一の鉄道営業路線になった。

まずは津軽五所川原駅の腕木式信号機から見ていこう

津軽五所川原駅の腕木式信号機は駅舎から250mほど津軽中里駅寄りに設置されている。この信号機は腕木の津軽中里側が赤い外方(表)なので「場内信号機」なことが解る。
では、その腕木信号機を外方側から白い内方(裏)へと、表示も含めて眺めていこう。

津軽五所川原駅の津軽中里方にある場内信号の腕木式信号機を外方から眺めたところで、腕木が「停止」現示の状態。右の信号機はJR五能線の3位式の色灯式信号機。
上写真と同じ向きからの「進行」現示の状態。右の黄色の標は「雪カキ警標」。
同じ信号機を内方から眺めたところで、現示は「停止」の状態。
上写真と同じ向きからの「進行」現示の状態。とはいえ腕木が白い内方側なので、こちらからは進行できない。

金木駅は腕木式信号機以外にも棒状スタフなど見どころ多数

津軽鉄道沿線の観光地では全国区の知名度を誇る「斜陽館」への最寄りの金木駅。ここは交換可能な駅で、相対式ホーム2面2線を有していて、その場内信号に腕木式信号機を使用している。
では、まず津軽五所川原寄りの信号機から見ていこう。

金木駅の津軽五所川原寄りにある場内信号の腕木式信号機の外方側。走り去る上り列車のリア窓から眺めたシーンなので腕木の現示は「停止」になっている。夕方の撮影なので色灯に灯火がつき、腕木が水平では「赤」を現示するのも確認できる。
上と同じ信号機の内方側。信号は進入してくる下り列車に対して現示しているので「進行」になっている。車輛は前から津軽21形104+102。そして、夜間灯火用の電線が駅側からつながっているのが解る。
津軽中里寄りの場内信号機は駅から案外離れたところに設置されている。途中には踏切が2ヶ所あるので、ワイヤーがこの道路をどのように越えているのかも見どころになる。
それらも含めて、津軽中里寄りの信号機を眺めていこう。

金木駅の津軽中里寄りにある場内信号の腕木式信号機の外方側。列車は津軽21形103の下り津軽中里行で、走りくる場面なので腕木の現示は「停止」になっている。
上と同じ信号機の内方側。腕木は進入してくる上り列車に対して現示しているので「進行」になっている。車輛は津軽21形102。
上の信号機のすぐ金木駅寄りにある踏切から腕木式信号機の内方側を眺めたところ。信号機からの作動用ワイヤーはまず林立する柱の中空を介して張られているが、道路手前で地中に潜っているのが窺える。
上写真の場所からの反対向きの駅方の眺め。道路に潜ったワイヤーが再び地上へ表れて、また林立する柱の中空を介して張られ、それが駅まで続いているのが解る。ワイヤーが高所に張られているのはここら辺が雪国だから、その降雪対策だ。
腕木式信号機に付き物といえば、信号てことタブレット閉塞機だろう。当然のことながら、金木駅にこの2アイテムは存在し、日々活躍をしている。
なお、津軽鉄道線は、津軽五所川原-金木 間がタブレット閉塞で、この設備を使用しているだけでもレアなのに、金木-津軽中里 間はなんとスタフ閉塞を使用していて、超稀少な棒状の通票の授受シーンをみることができる。この記事ではその写真を省略させていただいたが、その授受シーンも、いまとなっては珍しい光景だといえるだろう。

写真左はタブレット閉塞機で、下にタブレットキャリアが掛かっているのが見える。写真右は信号てこで、プラットホームに建つ小屋の中にある。共に駅の承諾を得て撮影。
ここまで読んで頂いて、津軽鉄道線の腕木式信号機は3つとも場内信号機なことに気づいたと思うが、そこで豆知識を一つ。場内信号機と出発信号機では腕木の長さが異なっていて、だいたい場内は120cm、出発は90cmを採用している。なので津軽鉄道線の腕木は3本とも120cmのタイプになる。
ちなみに、津軽鉄道の駅の場合、ラッチ内の施設を見学するには入場券が必要だが、筆者は1日フリーきっぷを使用していたので、幸いにもそれが免除された。この点は現場なりの判断と思うので何とも言えないが、フリー切符は他に普通乗車券をいちいち買う手間が省けたり、沿線名所巡りとしても使えるしで、便利な乗車券なのでお勧めしたい。

津軽鉄道の「1日フリーきっぷ」は2,400円。この発売・使用期間が2019年9月30日となってはいるが…!!
ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。

[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。