鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
仙石東北ラインのおさらいをしよう
2015年5月30日にJR仙石線が全線運転再開とともに、同日に仙石東北ラインが運行を開始。東北本線の仙台駅から東北本線を走行して、松島駅仙台寄り約600mにある分岐点(営業上は松島駅構内)から接続線を介し、300m先にある分岐点(営業上は高城町駅構内)から仙石線に入り、石巻駅まで直通運転を開始している。
そして、東北本線のこの区間は交流電化、仙石線は直流電化であるということは、当サイトの閲覧者の皆さんはすでにご存じのことと思う。
ではこの区間に使用されている車輛はどんなモノなのか? そんなの今さらというガチテツの方には本文はスルーしていただき、写真で新線部分の乗車気分でも味わっていただければ幸いである。
ディーゼルだけどモーターで走るHB-E210
さて、使用されているのはディーゼルハイブリッドシステム車輛HB-E210系という形式のハイブリッド気動車で、従来の液体式気動車のようなエンジンの回転を変速機を介して車輪を回す動力伝達方式の気動車と違い、大別すれば、エンジン発電機により得た電力によりモータを回して走行する電気式気動車の仲間になるが、ディーゼルハイブリッドシステム車輛と言われるゆえんは、大まかに解説すると、エンジン発電機により得た電力をコンバータにより直流に換えて、それをリチウムイオン蓄電池に充電し、低速力行中はその電力をVVVFインバータを介して三相交流にしてMT78形かご形三相誘導電動機により車輪を回し、また中高速力行時には上記エンジン発電機からの電力をコンバータを介して直流に変えた電力を組み合わせて、それをVVVFインバータを介して三相交流にしてMT78形かご形三相誘導電動機により車輪を回して走行するという仕組みになっており、さらに停車中や惰行時にはエンジン発電機のアイドリングストップをし、制動時には回生ブレーキによりモータから発生した交流の電力をVVVFインバータを介して蓄電池に充電させるシステムも備えている。細かいシステムはまだまだあるが、これらにより、燃料消費量を低減する他、窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)の排出量を約6割低減しているとのことだ。
走行音は電車のようであっても、実質的にはエンジンにより動力を発生させているという、そんな車輛により実現できた交流直流の直通運転なのだ。
このハイブリッド気動車の形式はHB-E210系と、「HB」が頭に付くが、ハイブリッド気動車としての先輩にあたる2007年に登場した先行量産車キハE200には「HB」が付かない。これは2010年に登場したHB-E300系気動車からハイブリッド気動車については「キハ(ロ)」の形式称号にかえて「HB-」の記号を用いることとしたためである。
営業キロ設定の記録を更新
もう一つ、仙石線・東北本線接続線の話しであるが、この区間の松島-高城町 間の営業キロは0.3kmに設定された。これができたことによりそれまでの最短駅間であった仙石線 あおば通り-仙台 間、東北本線 日暮里-西日暮里 間、境線 博労町-富士見町 間の営業キロ0.5kmを短さで上回り、JRグループの中で最短駅間距離を更新した。
しかし、乗車してみると東北本線側では松島駅を通らないし、東北本線から分岐した地点から高城町駅まで地図上で換算しても1km以上あり、乗車していても0.3kmという実感が湧かないので、それまで最短駅間距離だった区間からすると、何とも釈然としない記録である。
では、この0.3kmという距離はどのようにして決まったのか。それは、東北本線の分岐点の上下線中心と、仙石線の分岐点の間の線路の長さとのこと。何とも良心的な距離設定である。
ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。
「仙石東北ラインに走っているのは どんな車輛!?」への1件のフィードバック
コメントは停止中です。