鉄道旅を一層たのしくする車窓・施設案内シリーズです。
[場所] JR東北本線 宇都宮-烏山線 烏山
ローレル賞に選ばれたACCUMとは?
ACCUMとは、一般型直流用蓄電池駆動電車EV-E301系に付けられた愛称で、2015年時点では、JR東日本の東北本線 宇都宮駅から烏山線 烏山駅の区間のみに走っている。
ちなみに『ACCUM』は蓄電池を表わすイギリス英語「ACCUMulator」から捩って付けられた愛称で、形式の『EV』は「Energy storage Vehicle」の略。
そしてこのACCUMは1形式1編成2両という稀少な車輛でもある。
しかしそんな少数派ながら2014年に営業運転を開始した鉄道車両の中から鉄道友の会が優秀とする車輛に授与されるローレル賞に「新しい動力装置を具現化した、極めて意義の大きな車輛」として選定され、2015年5月21日付で決定されているという優れものなのだ。
省エネ性能が良いACCUMだが運用線区が限られるのか
では何が『新しい動力装置』なのか。それは簡単に言えば、電車なのに非電化路線を走ってしまうということ。それも単にバッテリー充電式の電車ではなく、架線の下では架線からの電気で走行しながらも自身の蓄電池に充電するし、また回生ブレーキ作動時には、非電化区間では自身の蓄電池に充電して、架線の下では電力をパンタグラフを介して架線側へ返還するという、超省エネ電車でもある点があげられる。
仕組み的には、直流1500V電化区間では、架線からの1500VをDC-DCコンバータで630Vに降圧した上で、その後にVVVFインバータにより三相交流に変換して交流誘導電動機を制御する。非電化区間ではリチウムイオン蓄電池からの電気をVVVFインバータにより三相交流に変換し交流誘導電動機を制御している。
また、地上からの地点情報を受信して、非電化区間のパンタグラフの上昇防止、架線下での条件に合わせた集電電流値の制御をするシステムも搭載されている。
これほど良いことずくめの電車ではあるが、当面は宇都宮-烏山間のキハ40の置き換え計画しか発表されていない。ではなぜこの区間にしか走っていないのか。それは直流電化区間と非電化区間の距離が程よくミックスされていないと活きてこないからだ。鉄道地図を眺めてみればJR東日本にはこの条件にマッチしている線区がココ以外にはほとんど無いことに気付かされる。あえて探せば、磐越西線新津方の区間運転か、交流区間への乗り入れになるが 仙石東北ラインくらいなものだろうか。
そんな稀少な車輛ではあるが、ACCUMがどの列車の運用に入っているかは、時刻表の烏山線のページを見ればすぐに判る。それは列車番号の末尾に、電車を示す「M」が付いているからだ。
ということで、2015年6月時点での運行時刻を記しておこう。
行き先 | 方向 | 宇都宮 | 宝積寺 | 烏山 | |
---|---|---|---|---|---|
烏山 | > | 10:03 | 10:17 | 10:22 | 10:57 |
宇都宮 | < | 13:25 | 13:12 | 13:10 | 12:29 |
烏山 | > | 13:40 | 13:54 | 13:56 | 14:32 |
宝積寺 | < | 16:11 | 15:29 | ||
烏山 | > | 16:35 | 17:11 | ||
宇都宮 | < | 18:33 | 18:20 | 18:18 | 17:37 |
このウェブサイトの読者なら、何をいまさらという話題かと思うが、ローレル賞に決定したことでもあるし、初期の物珍しさ乗車の盛況もそろそろ一段落したと思うので、この時期に掲載させていただいた。
ACCUM出発式の様子が下のURLから動画が視聴できます。
https://youtu.be/kGbdO8fliIw
ここに掲載の内容はアップ日時点の情報になります。その後に状況の変化や、変更があった場合にはご容赦ください。
[寄稿者プロフィール]
秋本敏行: のりものカメラマン
1959年生まれ。鉄道ダイヤ情報〔弘済出版社(当時)〕の1981年冬号から1988年までカメラマン・チームの一員として参加。1983年の季刊化や1987年の月刊化にも関わる。その後に旧車系の自動車雑誌やバイク雑誌の編集長などを経て、2012年よりフリー。最近の著書にKindle版『ヒマラヤの先を目指した遥かなる路線バスの旅』〔三共グラフィック〕などがある。日本国内の鉄道・軌道の旅客営業路線全線を完乗している。
「ACCUMに乗ってみよう」への2件のフィードバック
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